第七一二回 始まる社交的なフレーズ。


 ――今この地で僕は、プリンセスへの道を歩むことへの宣言を受けた。



 華やかな今宵……


 そのために習得すること、それはマナーや作法など。食事の際はナイフにフォーク。アクリル板で向かい合わせとなる友と、共に学ぶ食育というもの。このことに関しては、この度が初体験で……僕はもちろん梨花りかも、可奈かなも、それに意外にもお嬢様系のせつもだったの。摂は和風なので洋風には不慣れ。だけれどりんは、巧みに操るというのか……


 ナイフとフォーク。しかしながら、よくよく観察するならば、

 凛と向かい合わせになっている子は、円城寺えんじょうじらん。この二人は、昨日より何らかの意気投合をしたかのように、いつも一緒にいるようになっていた。弾む会話から、そのような解釈も容易にできる。きっと十人中十人が同じ回答に至ると思う。


 そこで加わるのは、天気てんきちゃん。この二人の会話の中へ……


「どうせやるのなら、演出効果高めようよ」と、言葉を挿んで。


「例えば、どのように?」


「そうね、このように……というのは冗談だけど、映画の『シャルウィダンス』って知ってる? 私が求めてるのは、そんなドラマチックな展開だから。千佳ちかちゃんのこと応援してるなら、どお、私と手を組まないかしら? 結城ゆうきさんに、ええっと、円城寺さん」


「あっ、それならもう凛と蘭になったから、昨夜から。

 なので出雲いずもさんのことも天気って呼ぶね。ちゃん付なしなのも凛たちのルールだから」

 という具合に、結構力強い会話が聞こえてくる。


 僕は『シャルウィダンス』という映画を知らないから、この後の後に習得することになるのだろうか? 天気ちゃんは見た目よりも結構スパルタなので、演技指導には熱が入ることが予想される。そこにはまた美千留みちるも加わっていた。「面白そうね」と言いながら。


 今は白と紺のブレザー制服。昨日は臙脂えんじ色のジャージ。今朝は……やっぱり乱れに乱れて半分は裸、あっ、それは忘れて、今宵は情熱の赤いドレスと聞こえてきた、彼方から。



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