第七一〇回 白き光は、朝霧の目覚め。


 ――カーテンから漏れる光は柔らかく、まだ冷たさも残しながらも朝を告げる。


 ここには時計はないから、唯一テレビだけが時刻を告げるシステム。なので、僕はリモコンを持ち点けるテレビ……すると液晶の灯りが広がって、この部屋の状況を、そっと明るみにした。見るからに……とても見せられないような状況。とくに男の子には。


 白熱した枕投げは、枕の惨状だけではなく……

 何でか衣服も乱れ、皆が皆。ご想像はお任せしますが、盛り上がった証拠なの。


 時間は、まだ五時二十五分。その表示を見た途端、パタッと僕は沈む。何となく下半身がスースーした感じはするけれど、とにかく眠い。脳の痺れから、また眠りの中。


 それから……


 それから場面転換でもしたような感覚で、僕らはバスの中。時は、もう午前も末期。ということはお昼も近く。バスの隣には、太郎たろう君がいた。……それはまるで、白雪姫が夢から覚めるように。目の当たりに、白き王子様というようなイメージ。僕の中では。


 昨日の今日だから余韻は残る、露天の湯での出来事。


「あの、太郎君、昨日はその……りんちゃんのことでね」


「わかってる。千佳ちかが拳骨一発で済ましたこと。俺は、とっくに気にしてない……というのか、まあ何とも羨ましい展開とでもいうのか、千佳だけでなく大人の女性も……」


「シッ、内緒だからそれ。……それとも、僕のその……魅力なかったの? 何度も見たくせに、触ってもいるのに、瑞希みずき先生の方が、……遥かに胸だって大きいし、僕なんかよりも弾力ありそうだし……ううん、触った感覚なんか、それはもう……」


「おいおい、話が脱線してるぞ。内緒話だったんだけどな、もう噂も噂で、実は柴田しばた先生の耳にも入ってるんだけど、……偶々聞こえたんだ。瑞希先生と話してるところを」


 僕は固唾を呑む……胸の鼓動も抑えつつ。


「でな、『背中ぐらい流してやれよ』とか言っていてな、柴田先生が」


「はあ?」……と、思わぬ柴田先生の言葉に、僕は呆気に取られ……


 それでも走るバス。次の目的地に向かいつつ。お話の続きへ、まっしぐらに進みゆく。



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