第七〇八回 その時間、ソフトにて候。


 ――露天の湯だけに和風な趣。お湯を中心とした身も心も裸の付き合い。



 この三人を見ているのは、もはやお月様だけ。その照明は月光と名乗る。そこに語らいの場を設ける。裸の付き合いは、素の言葉でさえも和やかにする。愉快な会話が成立。


 これぞ求める……

 真の生徒と先生の会話。見た通りの包み隠さず……そう、瑞希みずき先生は言っていたの。


 その余韻、この夜を駆け巡る。一歩間違えば、停学必至の状況だったけれど、この学園生活の宝ともいえる忘れ得ぬ想い出となる。もちろん三人だけの秘密……だけれども。


 誰も知らない三人だけの時間となった。……あっ、四人か。


 ゴチン!


 落ちたのはいかずちではなく、僕の拳骨こぶし


「痛~い」と頭を押さえるりんちゃん。「大変だったんだからね。一歩間違えば停学になりかねなかったんだから」と僕はプンプン……「なんて嘘だよ。凛ちゃんなりのサプライズだったんだね」と、僕はすぐさま切り返した。ふくれ面から笑顔へと。


千佳ちかちゃん、ごめんね。実はね、お返しの中にも仕返しがあったの」

 と、凛ちゃんは言うの。……って「僕、何かした?」と訊いてみる、迅速な対応で。


「だって千佳ちゃん、凛のことばっかだから。太郎たろう君のことよりも、凛にばっかり構っているから。恋仲なんでしょ、もっと冒険しちゃえ……と、思ったから」


 その会話は部屋の片隅。これから就寝しようとする部屋の片隅で……二人だけの内緒話だったけれど、飛んできた枕! それが、凛ちゃんの顔を直撃した……


 ポロリと、顔から落ちる枕。鼻の頭を赤くしながら、凛ちゃんは目を丸くした。すると可奈かなが「何二人でコソコソしてるの? 細かいの無し。さあ、枕投げの時間だよ」


 と、もうノリノリで……「って、何言ってるの? こんな夜中に騒いじゃダメじゃないのよ」と凛ちゃんが言うも「どの口が言う? もっと冒険しちゃえなんて言ってるくせにねえ」と可奈が挑発するから、凛ちゃんも落ちた枕を拾って、可奈に投げつけた。



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