第一〇〇章 七〇七は、サブマリンから。

第七〇七回 それって、まさか。


 ――ボブのポッチャリさん。そのシルエットは、とても柔らかそうな印象を与えた。



 やや薄らぎ気味の緊張感……


 お湯のリラックス効果も合わさって、できるだけ身を寄せる僕と太郎たろう君。肌と肌はもうお湯の中では限りなく密着で、そんな中を、その湯煙を掻き分けながらも、そのシルエットはハッキリと、その人物を明るみにした。しっかりと遭遇し、お互いが認識したの。


 ……誤魔化しが効かないほど。


「あら、あなたたちも気に入ったのね、この露天の湯……」


 と、その人は普通に、ホッコリした笑顔で尋ねたの。僕と太郎君に……しかも、しかもだよ。とても近い距離。それ以前にこの露天の湯は、思うほど広くはなく、ハッキリ見えているはずなの。僕と太郎君の存在……顔見知りで、よく知った間柄……その筈なの。


瑞希みずき先生、ここって……」

 と、僕がやっとの思いで、太郎君よりも先に声にした。


「女湯からも男湯からも繋がる場所なの。大浴場から見たら分かりにくい出入口なんだけど、うっかりあの子に教えちゃったから、あなたたちもあの子から聞いたんだね……」


 瑞希先生の言うあの子は、きっと僕たちの思うあの子と一致している、紛れもなく。


 ――りんちゃん。


 でも、瑞希先生は名前を伏せていた。それに、僕と太郎君が横並びで一緒に、お湯に浸かっていても……瑞希先生は、とてもリラックスな笑みを浮かべていて、水着を着ているわけでも、タオルを巻いているわけでもなく、僕らと同じく一糸まとわぬ姿でもって、


「あの、僕ら、女の子と男の子と一緒に入ってるんですけども……」

 と、僕は言う。言ってどうにかなるなんて、想像もできないけど、


「関係ないない。人は生まれた時は裸だから。わたしは平気だよ、君たちと入るの。背中も流してあげたいくらいだけど、この場所は露天の湯だけだから、まあ、ゆったりとしていこうよ、折角だから」と瑞希先生の言葉は、僕らの想像を遥かに超えていたの……



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