第七〇一回 同じお部屋で、それでも広がる世界観。


 思えば去年の……

 四月の四角関係の面々が、この同じお部屋に集っているの。



 三角よりも角の取れた四角関係の四人。奥の細道に続く温泉で裸の付き合いをした、そんな関係の四人。せつ可奈かな梨花りかを取り合っている……言わば、女の子同士でも恋の戦いを繰り広げている、そんな仲。僕がいることにより、角の取れた仲になったという。


 偶然に近い必然で、一班六人制を決めたのは先生側で、この面々にしたのも僕らではなくて先生側で決めたこと。それが証拠に、お馴染みの天気てんきちゃんと美千留みちるは別の班。


 知った顔ばかりが集うのではなくて……


 この高等部での、新しい面々とも親睦を深めるという意味を含めつつ、先生たちはこの班分けをしたのだと、僕にはそう思えるの。――君もそう思うでしょ?


「そう思うよ、りんも」


「へっ?」と、僕は驚く。心の声に反応した凛ちゃん。それはそれは、凛ちゃんだけではなくて、「えっと、星野ほしのさん」と、円城寺えんじょうじさんは僕に? 声を掛けようとしているの?


「僕は千佳ちかだよ、星野千佳。……で、あちらはね」


「僕は梨花りかだよ、星野梨花。……と、いってもわかりにくいよね? いいんだよ、円城寺さん。梨花か千佳か呼んでくれたら、僕らの方で反応するから。星野さんだったら、二人とも返事をするけど」すると可奈が「大丈夫、二人とも優しいから」そして摂が「まずは自己紹介からね。一人ずつ、何処の中学校から来たのかも含めて。私もそうだから」


 いつの間にか……


 この同じお部屋にいる六人が六人とも、和やかに輪になっていたの……


「私、ボッチだったから、こういうのに慣れてなくて……」

 と、円城寺さんは言うけれど、色白の顔も赤らめながら。


「そんなの関係ないない、僕もこの子たちに会う前はボッチだったから」


 と、僕は胸を張って言った。円城寺さんよりも、遥かに小さな胸だけれども……



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