第六九三回 だとしたら、その目的とは。
――ふと思ったこと。或いは、ふと気付いたことかもしれない。
それは金曜日の、薄紅色だった風景が緑色へ変わっていた午前。降りしきる雨が、五月雨の趣へと変えたから……気温もまた然り。生温い匂いがする風の中に於いてなの。
教室の中……
慣れ初めたのかな? 高等部の授業模様……
授業は数学。上の空よりかはまだ真面目と思っている。頭の片隅には、今日学んだことを置いている。後に復習することを、心の中ではそっと決めているのだから。きっと僕は不真面目じゃないの。ほら、この目を見て。嘘偽りのない目でしょ? と訴えると、
「
……えっ?
まさかの当てられちゃった。先生に。先の説明って何? わわっ、右から左なの。
「あ、あの、さっきのって……」
「まさか聞いてなかったのか? 上の空だったのか、俺の授業?」
数学の先生は
「柴田先生、ごめんなさい! ちょっと考え事をしてたもので……って、これ言い訳ですね、もう一度お願いします、説明。やる気はありますので、本当に」
僕の頭は湯気が出る程、顔までも熱くなった。
すると、柴田先生はプッと笑うの。釣られて皆も、笑っているの。
「千佳、そんな畏まらなくても、さっさと前に出て来い。教えてやるから、その通り黒板に書いてみろ。皆もこれノートに写す。試験に出るから、よく覚えておくようにな」
黒板に書く……
柴田先生に言われた通りに、方程式を。――方程式? まさにそうなの。僕らは集ったのだ、意図的に、ここにある種の集結をするように。導かれそうなの、その答えも。
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