第六九〇回 やっぱりピカピカの一年生。


 ――集うグランド。掲示板には、クラスと氏名が明朝体で表示されていた。



 高校入試の合格発表を彷彿とさせるように、各自が自分の名前を探すという内容。すると皆……「皆、同じクラスだ」と、声高らかに喜び合う。さっきまで囲み合った面々。


 その氏名はというと……


 なるべく、あいうえお順に……出雲いずも天気てんき神崎かんざき美千留みちる日々野ひびのせつ藤岡ふじおか可奈かな。それから僕、星野ほしの千佳ちか。星野梨花りか結城ゆうきりん。そして霧島きりしま太郎たろう。(もうすぐ名字が変わるの)


 ――霧島から南條なんじょうに。

 僕も名字が変わったことがあるから、お互い様であまり驚かない。


 それはそれとして、皆同じクラスになれた。そこに大いなる喜び。


 その歓声は、八時半のお空に羽搏きながら。そこに現る我らが担任。掲示板にも書かれてあるけれど、威風も堂々たる登場に至った。そこから始まる、高等部ライフが。


 高等部で巡り合えた友は、生涯の友となる。


 なので、巡り合えた友は、永遠とわゆかりとなる。そう言っていた、我らが担任の先生のまた先生が。その先生も、また当時の担任から聞かされたことだと、言い伝えられてきた。


 四月を彩る薄紅色……


 それはこれから始まる三年間を祝す色……


 ここに集う面々と、卒業までを共にするための儀式。それが今、体育館へと移動し行われる入学式。僕らクラスメイトを率いる担任は、平田ひらた瑞希みずき……瑞希先生だったの。


 懐かしくも、新鮮な趣。


 高等部という春の風が、僕らの身を引き締める。つい、一か月前はまだ中学生だった僕ら。校長先生の長い話よりも、その現実の方が充分に説得力がある。身に染みる空気。


 それこそが、それこそが……


 長いお話のはずが、そう感じさせない程の緊張感。研ぎ澄まされた感覚。その中で導かれる教室。一クラス二十四名が、この度は三クラスと言われている。人は増えていた。



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