第六八三回 春に向かう母と子を。
――青い世界。それは硝子が午前の光を受けて、印象を心に残す色。
そして到着する、済生会病院。
向かう……
チューブに繋がれ……点滴。ベッドに横たわる千夏さんは、
意識もハッキリしている様子、しっかりと僕らを見るなり、
「太郎、何て顔してるんだい……」と、言うの。
「おかん、俺の……学費のことで」と、太郎君が更に顔を曇らせると、間髪入れずに「何言ってるの、あなたはそんなこと心配しなくていいの」
「……だってさあ」
「だってもないの、
……気丈な人。
太郎君を女手一つで育てた人。少なくとも今の僕になら、わかるような気がした。お母さんも同じだったの。母子家庭の厳しさを……それでも子の前では気丈に振る舞う。
子を持つお母さんは、とても強い人だ。
僕も、僕もなれるかな?
いつの日か、千夏さんみたいに強いお母さんに……
そう思った時だ。
「もうそろそろいいんじゃないのか?」と、声が聞こえた。男性の声。太郎君は勿論、パパでもなく、それ以外の人物。今目の当たりに現れている。初対面ではなく第一回の『ウメチカ戦』でお世話になった人で……その名字は
「お互い意地を張るのはやめて、太郎のためにやり直してみないか」と、言いつつ。
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