第六六九回 終点から繋がる路線へ。まっしぐらに御堂筋!


 ――快晴なる御堂筋。僕と太郎たろう君は手を繋いで歩む、向かうは『来夢来人らいむらいと



 そこに、今日の誘い主がいる。その名は葛城かつらぎしょう……翔さんなの。その連絡は、実は今朝だったの。早朝寝起き間際にスマホから着信。僕はまだお布団の中……「ふあい、星野ほしのですが」という具合に出たの。『梨花りかか? 千佳ちかか?』と訊いてきたので、


「千佳です。梨花はまだ就寝中……」


『なら、ちょうど良かった。太郎と来てほしいんだ、俺のバイト先のラーメン屋。俺からのプレゼントをさせてほしいんだ。太郎の誕生日は昨日だろ? 俺の創作料理が御品書きに載るんだ今日。俺からの奢りだから、食べに来いよ。……待ってるぞ』


 と、梨花の言う通り自己中でKYだけど、


 そこが何故か、翔さんの魅力の一つなのかも。だから足取りも軽く、今はもう店内に身を躍らせている。颯爽たる翔さんのおもてなし。……御品書きを見せ、紹介する。キャッチコピーも併せて。チャーシュー麵のようだけど、そのスープの色はブラック……


 以前にも、見たようなラーメンだけれど、


「芯から温まる。味も広がって」


「だろ? 冬限定だけどな。それにこのお店の看板メニューは、ブラックだからな。俺のは少しアレンジしてあるんだ。何を隠そう、それこそが隠し味。秘密のレシピだな」


 翔さんの弾む言葉とその笑顔。


 太郎君は夢中になっているの、そのお味、ラーメンに。

 それは僕も同じ。二人揃って、食す。そのラーメンを。


「おっ、綺麗に完食だな。何も残さず」


 翔さんは感激している様子だったの。「美味しかったか?」と感想を求めている。


 ――もちろん美味しかったの。


 それは太郎君も同じ。それに周りにはまだ、お客様の姿は、僕らだけだ。そう思った途端、するとどうだろう、続々と姿を見せるお客様。あっという間に埋め尽くしたの。



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