第六五九回 それは、また夢見る明日。


 ――今になって解り始めたマイドリーム。今だからこそ定め始めるマイドリーム。



 太郎たろう君と一緒に勝ち超える入試試験。きっとその先に……


 僕らの夢。その夢は夢ではなく、現実にある目標へと成長する。それが、これからの課題となるの。だから決して、高校入試を勝ち超えることがゴールではない。あくまでスタートなのだと僕は確信するから、祝いのチョコを作ることにしたの。題して……


千佳ちかの特製チョコ』もちろんハート型だ。


 入試試験の日が二月十四日なので、一発勝負のバレンタイン。太郎君も僕も……


 フミフミと寒い日が続く今日この頃、僕は、そのための材料の購入に歩いた。歩いていると、梨花りかが「僕も手伝うよ」と言って一緒にスーパーへ。やはりデパートよりも、近所のスーパーの方が探しやすいし集めやすい。


 要は愛情だ。心を込めた本命。


 そのことを肝に銘じ、制作に取り掛かる。並んで台所……


 笑顔弾むその内容に、「あらあら、今日も仲がいいのね」と、お母さんが手伝ってくれた。二年前は、夢にも見ることができなかった光景が、ここに実現していた。


 夢また夢と、そう思っていて他人事のように思ってもいた光景が、我が身になっていたのだ。だから、もう夢ではなく現実の光景。紛れもなく、そうなの。


「ビッグなハートね……」


 と、その出来上がりに梨花は驚く。脳内では轟いていたのかも? それでも出来上がったのだ。満点なチョコが。そして僕は言う……「これはね、僕の気持ちだから」と。


 その仕上がりはビター。

 甘くはないの。でもね、苦すぎでもなく、ちょっぴり甘いの……


 少しばかりの、冒険心も兼ね備えつつも、今の、僕の乙女心を表現したから。もっと大人になったらね、僕自身にリボンを掛けるのだろうか? その時はきっと、僕と太郎君が結婚する時なのかもしれない。……溢れる想像、心トキメク明日に繋げて。



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