第六五五回 必勝と必勝は連鎖するの。


 ――それは、令和元年の八月二十四日。梨花りかがまだ、その日を自分の誕生日と思っていた日のことだ。そして梨花が、初めて演劇部で、それも主演で舞台で演じた日のことだ。


 あの頃はまだ、僕らが姉妹ということを知らずにいた。……梨花が僕と同じ誕生日ということも、二人揃って知らなかった。そんな頃だったの。


 何もかもが初めてのことだったの。演劇部も、皆で一つのものを創り上げることも。


 梨花も演劇は初心者で、可奈かなも……舞台経験はなかった。顧問の瑞希みずき先生だけが経験者という、そんな状況だった。そこで応援に駆け付けて来てくれたOBの中に、マリさんこと、早坂はやさか海里かいりさんがいたの。僕らの演技指導をしてくれた人だ。


 見れば見る程……


 リンダさんに似ているってわけ。とても母親に似た子ということなの、マリさんは。


 そしてその日に、梨花のお誕生日会を兼ねた演劇部の打ち上げの際に、お見えになられたということ。その日その時に、会っていたのだ。……そして僕は、知ることとなる。



 ――リンダさんが、書籍化もしている作家さんということを。


 今日この日この場所で……令和四年の一月十八日、リンダさんの五十二回目のお誕生日を飾るための早坂先生の恩計らい。十六日の今日に行ったというわけなのだ。


 リンダさんのPNペンネームは、朝倉あさくら希海のぞみ。かつてマリさんが、リンダさんの代表作を、二〇一五年のふるさと祭りで劇にしたという伝説がある。学園で語り継がれる伝説だ。


 そんな伝説を生み出した人が今、目の当たりにいる。緊張感もあるのだけれど、それをも和やかにするこの人の持つオーラ―というのか、雰囲気とも。


 ――そこで、


「拝見させてもらってるよ、書くと読む。……第七回のコンテストも大詰めね。彼氏の受験勉強とともに『ウメチカ』の連載も頑張ってね、千佳ちかちゃん。この人と一緒に応援してるから。そしてまた会いましょ、わたしも頑張って作品を執筆するから、まずは短編」


 そうなの。今日この日、僕はリンダさんから激励、元気も頂いたのだ。



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