第六五四回 必勝を飾る究極メニュー。


 ――それは咲き誇る、冬の峠を越えた桜の花のように。



 つまりは強さ、乗り越えるための勢いにも等しく、その様なメニュー。そのスープの色は黒……名は体を示すというけれど、ブラックという名前。とにかく食してみるの。


「どうだい、お味は?」


 と店主の声。皆が見守る、同席の早坂はやさか先生もリンダさんも。僕と太郎たろう君はタイミングもピッタリに、同時に食した。醬油ベースと思われるのだけど、柚子の薫りが広がる。


 何よりも、とても温まる。


「美味しい!」と、その感想も太郎君と同時の弾む笑顔。それからは進む進む食……御飯も大盛レベルでバリバリと沢庵も。炭水化物のコラボも、美しいハーモニーを奏でるの。


「うむ、当店の看板メニューだな」


 と、ウンウンと頷く店主、会田あいださんといった。……つまり今僕らが食しているのは、このお店のメニューにするための創作メニューだったそうだ。そして今日、正式にメニューとして決定する。その名は、その名はだね……


 補足するけど、ブラックというのは仮の名前。正式名称ではなく……

 考え込む店主。僕も思考するけれど……ネーミングセンスはあまりなくて。すると、


「愛のマーチ……というのは、どうかしら? このお二人さんに因んで」


「そうだな、俺たちにもこんな頃があったよな」


 リンダさんが案を出して、便乗する早坂先生。そこでふと思うのだけれど、このお二人は、いつ頃からお付き合いしていたの? まさかとは思うけど……


「今でいう高等部になってから。出会いをキッカケに」ということだった。なら、同じ学園の生徒だったの? 僕の大先輩……瑞希みずき先生よりもまださらに大先輩だ。


 ――そこで繋がったの、想い出の糸。


 僕はリンダさんに会っている。その前にリンダさんの娘、マリさんにも。あの令和元年の夏の日に行われた学園主催の『ふるさと祭り』の八月二十四日のその日に……



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