第六五三回 二人の御堂筋までの道程。


 ――また訪れたの。あれから一週間後の日曜日。太郎たろう君と二人で御堂筋。



 広がるオミクロン株の感染により、僕らの地域も蔓延防止となったので、開店されているか不安を募らせていたけれど、ホッと胸を撫で下ろす感じで開いていた。


「良かったな、千佳ちか


「うん」


 太郎君が声を掛けてくれたお陰で、さらに安心感を得た。店内に入ってみると、するとだね……感染防止のための対策が充分に施され、マスク会食の心配もない程に徹底されていた。それでもいつもと変わらない店内の、――活気ある明るい様。


 店主の元気な声が響くの。


「いらっしゃい、また来てくれたね、坊ちゃんにお嬢ちゃん。遠いとこありがとうね。

 どうだい? 受験勉強は捗ってるかい?」


「え、ええ、まあ……」


 店主のテンションの高さに少々? 二人揃って押され気味だけど、元気が頂けてとっても心地よく……って、あれ? カウンター席にいるのはもしや? しかも二人で……


早坂はやさか先生?」と、声を掛けてみた。「おっ、君たち」と、やっぱり早坂先生だ。それにそのお隣の人も反応し……異国の人? 青い目をしている。顔も白く、とっても綺麗なひとだ。しかしながら、よくよく見ていると初めて会ったという感じもしなく、何時の日か何処かでお目に掛けたようなそんな感覚もあって……それが思い出せなくて、


「あっ、紹介するよ。僕の妻、リンダだ」


「初めまして、この人がいつもお世話になって……って、あらあら、あなたね、この人からお話は伺ってるの、本当によく似た姉妹がいるっていうから。それに娘からも、演劇部でお世話になったって言ってたから、ご一緒していいかな? もっとお話したいから」


 ――リンダさん。


 早坂先生がご紹介してくれたけれど、まだ記憶の糸を僕は探していた。



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