第六五〇回 登校日のその前に。


 ――と、いうことは冬休みも最終日で、明日からはもう新学期。三学期を迎える。



 その三学期はこれまでとは、格段に異なる。中学三年生の三学期だから。数多くのドラマが誕生することを匂わせる。受験も、その中にある醍醐味の一つと言えよう……


 そして今日。今は、太郎たろう君のお家に身を置いている。


 中学三年生らしく、お勉強という名目で一つのお部屋にいる。なのでテーブルの上、テキストで賑わう。僕はいつものように、勝研ゼミのテキストに記載されている問題を、楽しく解いていた。「といや!」との心の雄叫びも含めて解く。問いを解くから……


 そんな僕を太郎君は見ながら、


千佳ちかってホント、楽しそうに勉強するなあ」と、言うの。


「勉強じゃないよ、遊んでるんだよ」と、僕は言う。……素直な答えと思ったけど、


「じゃあ『僕は勉強してないよ』と言いながら、そういう奴に限って、ちゃっかり勉強してるもんなんだぞ。千佳もそういう類か? 俺は俺で入試、必死なんだけどな……」


 と、機嫌を損ねたの? 何で? と思いながら、


「ひどーい! そんな風に見てたんだ、僕のこと」と、言うつもりじゃなかったの。



「だったら、どうしたら千佳みたいに楽しく勉強できるか、教えろよ」


「そんなの知らないよ……」


「じゃあ、俺と一緒にこの問題、解いてくれよ」と指さす、恐らく解らない箇所だと

思うの、太郎君が。僕なら……僕ならね、この場合はね、「こうしてこう」と零れる声。


 兎に角やってみせる、太郎君の見ている前で。その問題は数学。方程式の問題だけれども……そうだね、恋の方程式には解らぬことばかり。解るようになるには、もっと大人になることかな? であるなら、「一緒に高等部へ進学だね、太郎君」と、身を寄せ……


「千佳が『こうしてこう』と、そう教える限りはまだまだ、俺と受験勉強だな。そしてクリアーしたなら千佳は、そうだな……そう言うことだ、目指してもいいんじゃないか?」



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