第六四九回 初売りのウメチカ。


 ――初売り出し。この三箇日の醍醐味ともいえるイベント。其の時、一月二日。



 一月二日である理由は、この日がタイガースと呼ばれるデパートの、今年初の開店日だから。僕と太郎たろう君は去年から予定していたの。狙うはタイガース・グッズの購入。


 僕の好きな色は黄色。太郎君が好んで着るTシャツの色は黒……


 そこから察するに、僕らはタイガースという球団のファンだった。今はまだかなっていないけれど、今年は寅年ということも併せて、二人で甲子園に行きたいと思うの。


 野球観戦。実は瑞希みずき先生もそうだし、瑞希先生のお母さんはもっと熱狂的。そして何とお母さんも、タイガースのファン。今年になって初めて知ったから、お母さんの福袋も一緒に購入だ。因みに、ここは八階……



 するとすると、梨花りかに……あれれ? とっても綺麗な人。誰なの? と思っていたら、


「梨花、また俺を嵌めただろ? お前が『いいから着てみて』って言うから、試着室で着てやってる間にお前は、俺の服を袋に詰めてだな、それ持ってお前が出るから俺は、このヒラヒラを着たままになったじゃないか。それに千佳ちか、お前もお前でカワイ子ぶって『誰なの?』って、わざとらしいんだよ。それに太郎、そんなマジマジ見るなよ」


 ……と、言うことなの。しょうさんはまたもスカート姿。白いコートも似合っている。同じ女の子でもドキッとするほど綺麗なの。大きなプラモデルの箱を抱えながら。


「翔さん、ホント嵌めやすいもの」と、梨花はクスクス笑う。堪え切れない様子の笑いの中で「でも、嫌じゃないんでしょ? 翔さんだって女の子、綺麗になりたいのは女の子の永遠のテーマだから、本当は着たかったんでしょ? そのお洋服。ジッと眺めてたから」


 もっと赤くなる翔さん。やっぱり図星のようだ。


「だってハズいし……」


「とっても可愛いよ、翔さん」


 梨花の言う通りなの。僕から見ても同感だ。……でも、太郎君は僕を見なきゃダメ。



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