第六四八回 三箇日のウメチカ。


 ――繰り出したの、ウメチカへ。



 誰と一緒か? もちろん太郎たろう君と。一月も二日目なら、もう開いているの。タイガースという名のデパート。なら、この場所はもう察しが付くよね? タイガースといえば、プロ野球の球団。そこのスポンサーだから。僕の求めている物はグッズで、その福袋だ。


 そして太郎君も同じ。

 私鉄沿線の、一緒に乗る電車。臙脂のカラーだ。


 普通、準急、特急の順に構成されている。走る順番。それが基本となりダイヤが構成されるの。……まあ、あくまで僕の推測だけれども、順番が成り立っているのは事実だ。


 車窓から見る景色は、

 薄っすらと、雪の結晶が募っている。午前の陽射しで煌めいている。


 そして到着、ウメチカだ。……ウメチカは僕のPNペンネームだけれど、今の星野ほしのになる前の僕の氏名は梅田うめだ千佳ちか。ウメダのチカ。ウメチカだ。今到着した場所の正式名称は大阪梅田。

 それもまた梅田で、梅田の地下だからウメチカとなる。実に三つが重なって実現だ。

 ウメチカでの出会いで、僕はウメチカになった。


 つまりそうだ。出会いがあったから、僕は今も綴っている『ウメチカ』を。星野千佳になっても、物語はウメチカなのだ。それも、新章たるウメチカ! の由来だ。


 もうボッチではなく、太郎君が一緒。


 ええっと、それから少し離れた場所では梨花りかと……昨日の訪問者がいるの。


 昨日の訪問者の名は、君の、あなたの、その名を……


 ウイルスの感染が目立ち始める中、年末とあまり変わらない騒めき。躍動感は溢れるものの、僕らの周りでは喋り声が伸びやかに、伸びてゆくの。僕と太郎君は顔を合わせながら、静かな時間を迎えた。僕と太郎君はタイガースグッズの福袋。梨花と、ええっと、


「翔だよ翔。ホントは覚えてるんだろ? 俺たちはバンプラを購入、梨花と一緒にな」


 と昨日の訪問……いやいや翔さんが言った通りに、二手に分かれることに……



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る