第六四四回 さよならクロス。~千佳の募る想い。


 ――喩えるなら静寂に、深々と募る小雪のように。

 その宙を舞う様は、シャンデリアのような輝きを、そっと鏤めながら。



 眺める瞳、バルコニーから息も白く……そっと涙も溢れてくるの。ある意味は祭りの後の寂しさもあるけれど、イブの夜の想い出も深くて、それだけに寂しく感じつつ……


 師走の騒めきは白昼に留め、今宵は静かにキーボードを叩く。


 暫くは、お休みしていた執筆も、にわかに再開する。頭の中は真っ白だけれど、それでも書きたいことは沢山あるの。シャンパンで乾杯もした後だけれど……


 これっていいよね? 多分アルコールではないし、未成年だけど……


 執筆も一旦は席を外し、今はバルコニーで。一服……とはいっても別に煙草は吸わないし。これもまた未成年だから……というわけでもないけれど、きっと吸わないと思う。


 吸える年齢に達しても吸わないし、

 一生、ないと思う。……これが唯一の、お母さんへの反発もあってか。お母さんのようにならないからと、心の奥深くではまだ、そう思っているようなの。


 お母さんが、煙草を辞めた今になっても。その思いは未だ消えずだから。もしかしたら五年先も十年先も消えないのかもしれない。二年前とは随分と変わった今でさえもそうだから。僕に子供ができて、子供を育てるようになったら、わかることなのかな? そうなった時に、あの頃のお母さんの気持ちがわかるのかな? ……僕はまだ子供だ。


 溢れる涙は、お母さんと喧嘩したわけでもなく……

 太郎たろう君とも、うまく言ってないことでもなくて……ただ冷たい風が目に染みたから。


 何でもないの。


 ちょっぴり執筆で、躓いちゃっただけだから。……でも、大丈夫。今は梨花とともに作品を……十万文字まで、まだ少し遠いからお手伝いしているけれど、ウメチカはまだ続くから。だから、さよならはXマスに対してなの。しっかりと枕元の赤い靴下にも、プレゼントが入っていたから。それはそれはビッグで、サンタさんからのプレゼントだから。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る