第八十九章 ――輝ける年の瀬へ。
第六四〇回 可奈の胸の内……二人きりで。
――と、いうわけで、お先に大浴場に向かったの。
何だか可奈、急にしおらしく……
わからないけれど、訳ありのように思え、ほっておけなかったから。
僕に何か言いたそうな顔をしていたから、思い過ごしかもしれないけれど、僕は可奈の手を握り、大部屋を出て二人並んで廊下を、シトシトと歩いていたの。
翔さんたちには後で、現地で合流しようと言ってある。やっぱり折角の大きなお風呂は皆で入りたい。少し前だったら密は御法度で、黙浴が基本だったけれど、自粛も緩和されて少しだけなら、語らいの場としてもOKだ。やっぱり修学旅行の醍醐味の一つは、裸の付き合い。可奈とは何回もその機会はあったのだけれど、人の心は季節と共に移り変わるから、きっと言いたいことだって、その時とは種類も変わっているの。
マシンガントークだった可奈が、この様に大人しいのも、訳ありのようにしか思えないし、
「……喧嘩でもした?」
と、僕は訊いてみる。勿論その相手は梨花……だと思ったから。
「ううん、そうでもないけど、……何か、最近、梨花が私から離れて行っちゃうような感じがして。何だかこう、頻度が……私に話しかけてきてくれなくて……というのか、まあ普通に、喧嘩してるわけでもないけど、何かごめんね、変なこと言っちゃって……」
僕には、何となくわかるような気がする。
……可奈には、こうスッキリしてもらいたいと、そう思えるから。
「最近どお?
可奈は俯いた。深く息を吐くの。何となく察しのだけれど、それでも……
「構ってくれない。梨花と同じで。……
「じゃあ颯爽と温まりますか。お背中、お流ししますから」と、僕は言うの。
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