第六三八回 修学旅行はある意味、お勉強。


 ――ビッグイベントながらも、見事なる学園行事。学べる要素は多大にあるの。


 

宵の宿に、バスは到着した。今度は……


 エブリアニメのような趣の、喩えるなら『千佳ちか千尋ちひろの……』のような感じの、不思議な宿。怪しくも、また有名な宿なのだ。ここは温泉で有名な、百万石を名乗る所。


 グループごとに分かれるのは昨夜と同じだけれど、今宵はもう、離れ離れなの、太郎君と……今日は今日でまた、異なる物語が描かれるの。


 夕食は集う、中等部三年生の全クラス。だけれど、二クラス。全四十九名の男女合わせた生徒が囲む。連なるテーブル。目の当たりには寒ブリ尽くし。


 ブリの照り焼きから始まって、炙り大根やブリの煮付けなど。

 僕にとっては、至福の極みともいえる状況……それに、皆と食すこの時だからこそ、かけがえのないものとなる。このメモリーズはアルバムに飾られるの、そっと……


 傍には梨花りか……


 そして可奈かな天気てんきちゃんもしょうさんも。その盛り上がる様を記録している、カメラ使いの男性。実は、翔さんのお父さん。娘を追いかけて、この北陸の地まで来られたの。


 冬近し、

 冬になったなら、雪の国となる。


 明日は最終日となる。お泊りは、今宵で終わってしまう。


 ……なので「今宵はずっと一緒だな、千佳」と、翔さんは目を光らせているの。何に対して目を光らしてるのか? それは、枕投げ。


「ここは旅館だから、周りのお客様にも……ご迷惑かかるから、ダメなのよ」


 それでも光る翔さんの目。「静かにやるから、いいだろ?」と、まるで小さい子みたいな言い方。お勉強なら「風邪なの」と言いながらも、遊びにだったら「治った」と言うそんな感じ。……そんな翔さんを見つつ、「じゃあ、静かにね」と言う僕だった。





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