第六三七回 繋がるマフラーは、今この時。


 ――僕らを繋ぎ、今この時を繋いでいた。

 ペアー用の、長いマフラーはマーブル模様。大理石のように強固な絆が渦を巻く。



 そんな中で、僕らは出会った。同じお母さんのお腹の中で……


 息遣いもピッタリな、一卵性双生児として今、一緒に歩いている。繋ぐマフラーとともに手も繋いで。鏡開きのように並ぶ僕ら、レストハウスの中に於いてお湯を注ぐの。


 赤い狐と、

 緑の狸に……あの日と同じ、お星様は白昼の向こう側で同じように。



 テーブルを囲む。黒く艶のあるテーブル。鏡のように下から、今の僕らを映し出しているの。――それはね、過去の自分に。悲劇のヒロインを演じないために、前向きになるために、きっと映し出していると思うの。その思考の中で待つ、三分、五分……


 お饂飩うどんと、お蕎麦そばは待ち時間が違って、僕はお先に食すことになるの。梨花りかはまだ、あと二分待つことになるから。僕のは掻揚のお蕎麦。……緑の狸だからだ。


 梨花は赤い狐。……一卵性双生児だけれど、お好みは違う。喩えるなら、好みのアニメも。梨花はロボットもの。そこから連想されるように、少年向けがお好み。僕はエブリアニメ全般。読む漫画も少女もの。因みに魔法少女も大好き。……と、こうも違うの。


 なのに、お洒落は梨花の方が女の子っぽいの。


 僕は、夏場は半袖短パンが主で、動きやすいのを好むの。意外と体育会系?

 そんなことを思いながら食していると――


「あー、二人ともズルーい!」と、甲高い声が聞こえたかと思ったら、可奈かなが近づいてくるの。いやいや可奈だけではなく天気てんきちゃんも、それにしょうさんまで。それに翔さんに限っては「おいおい、何お前らだけで食ってんだよ、俺も誘えよ」とか言っている始末。


 これもまたあの日と同じ。――赤い狐と緑の狸は、相変わらず縁を結んでいるの。食は言葉の壁を越えて、人類皆共通の話題となるのだから、僕は大いに語ろうと思うの。



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