第六三三回 まるでタイムリープのように。


 ――それは、ここでの出来事。かつての写真業者と重なるメモリーズ。



 その一方で、僕らは未来の結婚式を思わせる写真撮影となるけれど、早坂はやさか先生にとっては、懐かしき思い出の場となったようなの。今まさに、カメラを構える春美はるみさん。


 和やかな雰囲気を作りつつも、

 ……そう。僕らの最高の笑顔を引き出してくれる。


 お話によるなら、三人の思い出話……早坂先生を迎え入れる椎名しいなさんと春美さん。大人のお話かと思いきや、何となくだけれど、大人のお話よりももっと若いお話のようで、僕らの耳にも入ってくる内容……なので、お堅いお話ではなかった。



 その昔、ここ芝の政では、ちょうどこの場所だったの……


 青空スタヂオという写真業者が、現像所を構えていた。今のようにデジタルではない時代。銀塩写真の時代となる。時は平成……まだ年号が一桁の頃だ。今でこそPCで写真が仕上がるのだけれど、この頃は、喩えるなら、まだ写真の歴史でいうところの江戸末期のようなイメージ。この場所には、大型の現像機が設置されていた。


 現像液と漂泊液……つまり薬品を使用していたのだ。もう残されていないと思われた現像機なのだけれど、目の当たりにあるの。絶滅したと思われた写真製造工程が、今ここに再現されているのだ。アナログ時代は、ここでは健在。カメラの中にはフイルムが存在する。そこからの現像が今、再現されるのだ。懐かしい思い出の中にも社会勉強かな?


 すると、早坂先生は……


「皆、よく見ておくんだ。昔はこのように写真が製造されてたんだ。ネガから印画紙へ撮影する工程。今は見られないが、銀塩写真は二重の工程で成り立ってる。基本色は三色でな、プリンターと同じ。イエロー、マゼンタ、シアンのフィルターを使って……ほら、このように補正されるんだ」と言いつつ、モニターには写真の映像が、映し出されている。


 そしてまだ、思い出話は続くの。でも退屈はなく、写真の仕組みに興味深々の趣なの。



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