第六三二回 純白は、トキメク恋の絶好調。


 ――喩えるなら、真冬でも通用しそうな恋人同士。



 ゲレンデをも溶かしそうな勢いのハートを、お互いが純白に身を包んでいる。その背景には、結婚式の場を思わせるようなステンドグラス。躍り出る二人は対面する。


 目の当たりには、


 白のタキシードで、バッチリ決めている太郎たろう君。どんなイケメンよりも、僕には超カッコよく見える。オンリーワンでありナンバーワン。最高潮にトキメク僕のハートなの。



千佳ちか、思えばまだ言ってなかったことがあるんだ」


 ……とても改まったような、太郎君。一体何が? と、予想し探る脳内の中。


 白い煙が出そうな程、脳内を駆け巡りはしたのだけれど、その答えは見えずで、時も待たずに、太郎君がまだ言ってないことを……言葉にするの。


「千佳、好きだよ」


 もうとっくに言っている言葉だと思っていたのに……初めてだった、言葉にしたの。


 太郎君が声にしたのは……火照る顔とともに出た言葉は、


「僕も、太郎君のことが大好きです」と、自分でもビックリするほど、しっとりと……


 そこで手を取り、写真撮影と転じるのだけれど、


 あれ? ――見えたものは、皆の姿。梨花りか天気てんきちゃんに可奈かな美千留みちるも? それにせつと、しょうさんまでも勢ぞろいしていたの。……と、いうことは今の場面を見られたし、聞かれちゃった。それこそ、ボン! と、効果音を立てながら、舞い上がるハート。


「おめでとう、二人とも」


 って、早坂はやさか先生まで。そして台詞は続く、早坂先生の。その対象は僕らを撮影する、この写真館のおじさんと、おばさん。「綺麗に撮ってやってくれよ、僕の大切な生徒たちの大切な思い出を」と、こだました。「元気にしてたか? 椎名しいな、それに春美はるみちゃんも」


 って、このおじさんとおばさん、早坂先生の知り合いだったとか……



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る