第六三一回 まずは晴れ舞台。憧れの衣装。


 ――女の子なら、一度は夢見る衣装。そしてその舞台。彼氏と、手を繋いで。



 ステンドグラスで飾られる場所は、僕と君の未来を、想像する場所となった。


 その想像は、映像となって現れる。今では見られなくなった観光写真だけど、ここでは蘇っていたの。かつてのウエディング・ブームが再来したと思えるような……或いは、今この時にタイムリープでもしたような、一昔前のラブストーリーのような展開。



 そもそも、そこへは太郎たろう君が、

「行ってみようか、千佳ちか」との、その一声ひとこえから始まった。


 とある写真館。そこには眼鏡でパーマのダンディーなおじさんと、ショートで可愛らしいおばさんが迎えてくれた。この二人は夫婦……もしも今日が十一月二十二日なら、いい夫婦の日となっていたことだろう。ここでは、ウエディング写真を売りとしている。


 所謂、アトラクション的な趣なのだ。


 僕らはまだ中学生だけれど、疑似的に、ウエディング写真を残すことができるの。

 なら……


「一緒に撮ろっ、僕らのウエディング写真」


 それは疑似的にも、僕らの結婚写真を意味している。かつては和装に憧れていたのだけれど、今この時には、ウエディングドレスを身に纏いたいと思えたの。一昨年のXマスの日、ティムさんと挙式を上げた時のお母さんのように、純白なウエディングドレス……


 太郎君は、やっぱり白のタキシード。


 そして其々の、着替えの場へと。少し未来へのお楽しみへと。


 僕にはおばさんが付き添ってくれる。女の子の場合、一人でウエディングドレスの着替えは難しいそうなの。お化粧も施され、それも込みだから。紺のブレザー制服から、純白のウエディングドレスへと、まるでオセロみたいな変化に、なることが予想される。


「こんな可愛いお嫁さんで、お婿さんも幸せ者だね」と、おばさんの言葉も添えて。



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