第八十八章 夢綴る、アオハルな山脈へと。

第六二九回 ここで、僕の本当の大好物は。


 ――寒ブリなの! ここで暴露したから。



 これまでの僕のナンバーワンは、カレーライスだったのだけれど……


 昔懐かしい味の中に、寒ブリが存在していたから。いつの日か行ってみたいと思っていた『寒ブリツアー』……てっきり僕が大人になってからと、その希望も見えてきた今日この頃、或いは梨花りかと、一緒に暮らせるようになってからと、今この時となったから。


 この度の修学旅行のコースは、


 実のところ寒ブリツアーと酷似した部分があるの。初めて……ではないけれども、可奈かなに習って検索というものをしてみた。何故か? 可奈にそのことをお話したからだ。


 使うものはスマホ……


 その場所は、移動中のバスの中で行われていた。僕の横には可奈。梨花が席を入れ替わってくれた。そして梨花は今、天気てんきちゃんと熱く語り合っているの。それは何か? 十二月初日から応募を開始する『書くと読む』の第七回コンテストについて。――ここまで熱は伝わってくる。『新解釈の白雪姫』は、もちろん短編でエントリーすると、一万文字以内で仕上げていたから。予想はしていたけれど、やはり天気ちゃんは参加するようだ。


「天気ちゃん……じゃないでしょ」


 と、耳元で可奈は言う。この間の美千留みちるの時もそうだったけれど、耳元はね、とっても弱いの。少し変な声も出ちゃいそうになるくらい。……あっ、そうなら、太郎たろう君は僕のツボを見事に押さえている。やだ、また思い出しちゃったじゃない。思えば昨夜のことで、


 まだ鮮度を保っている。……というよりも強烈だ。


千佳ちか、顔真っ赤だけど、どうしたの?」


「う、ううん、な、な、何でもないよ?」


 ジッと……僕の顔を覗き込む可奈。何でこういう時に限って? とも思いながらも、言葉を探そうと思っている間に、「やっぱり千佳は、太郎君に相談した方がいいみたいね」


 と、ニンマリとして可奈は言う。……それは、寒ブリのことも含めてかな?



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