第六二八回 やはり、東から昇るお日様は。


 ――つまりは昇る朝陽のように、僕らは出発した。この研修道場からバスに乗って。


 そして風にも乗って、午前の風。……来年の高等部になってからの研修を夢見つ

つ。



 僕にとっては生まれて初めての、


 ある意味、しょうさんにとっては高等部の研修も兼ねた修学旅行は、様々なエピソードへと繋げていく、ビッグなイベントで、もう後半へと差し掛かりながらも期待でしかない。


 バスは北へ……そこは北陸の地。

 車窓から見える広がる海は、潮の香りを風に乗せた。


 颯爽と降りてみるサービスエリア。暫しの自由行動。だけれど「この先、少し長いからトイレは済ますように」と、各先生から釘を刺された。


 乗り物酔いとかは……特になく、大丈夫。心配なのは可奈かなだったけれど、本人も「梨花りか千佳ちかが一緒だったから、それに天気てんきちゃんも、私の拙いお話に付き合ってくれたから」


 とのコメントも、マシンガントークの中に付け加えられて……広がる世界観だった。



 見上げると、広がるお空。


 その向こう側には、大気圏を超えたならば宇宙空間。可奈の大好きなお星様の数々があるの。名もなきお星様もきっと、存在している。


 僕のまだ見ぬ世界観のように、僕も皆の輪の中へと、思えば参加している。ごく自然にも……普通に。昔を思うと、とても想像もできなかったような今の状況。そう思っているとね、目の前に、いつの間にか現れていた。十五歳の姿のままでいる僕の伯父ちゃん。


 ――旧一もとかずおじちゃん。


 周りに梨花も可奈も、天気ちゃんまでいたけれど、どうも僕にしか見えていないの。


「今日はどうしたの?」


「――ん、そうだな、千佳の様子を見にかな? でももう、心配なさそうだし、僕の来世ももう起きそうだし、千佳には今生の良き思い出を積んでほしいから……僕の願いだ」



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