第六二七回 ならば、東から昇るお日様は。


 ――地球上で普通に起きることなのだけれど、意外と間違えて覚えている子が多いの。



 僕も、……実はそうだったの。可奈かなが教えてくれるまでは、そう思っていたから。僕の周りも、今、同じお部屋にいる、小学六年生の時のクラスメイト達、六人中三人が、同じように間違っていた。『お日様は、西から昇る』と思っていたのだ。


 因みに、美千留みちるもそう思っていたそうで……


千佳ちか、これ試験に出る?」


 って、まるで泣きそうな顔をして訊いてくるものだから、僕は、僕はね……


「大丈夫。僕も美千留と同じ間違いしてたから」


 と、励ますつもりで言ったの。でもね、プッと笑い声が聞こえたかと思うと、


「マジ? 超冗談のつもりだったんだけど」


「へっ?」


 一変したの。美千留の表情も、周りの空気も。……でも、その空気は温かく、


「また、こんな風に冗談も言いたいね。

 高等部になったら、またここで研修するんでしょ? 日々野ひびのさんから聞いたんだ」


「え、ええ。まあ……」


 少しばかり反応に戸惑ったけれど、嫌ではなかった。それは誤魔化しではなく、そうしなければならないというものでもなくて、ごく自然に、期待できるようになっていたの。


「そして皆一緒だよ。私も日々野さんも、それに太郎たろう君も……」


 と言いながら、そっと耳元で……


『見ちゃったよ。太郎君と二人、とっても激しかったのね、

 嫉妬するくらい千佳が、女の私から見ても綺麗に乱れてたから……もちろん内緒』


 その瞬間、顔から火が出そうになった。――見られてた。と、繰り返しながら脳内で果てしなく……「あ、あの……」と、その後の言葉が続かなくて、続かないまま。


 そして某アニメのOPオープニングとは違い、お日様は東から昇って、僕らを照らすのだ。



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