第六二五回 そして、目覚めのキスの後に。


 ――それは夢の続き?


 それとも、夢の入口なのかな?



 例えば、白雪姫が目覚めた後にあった出来事は、きっとまた夢への入口。……なら、今の僕は夢見る乙女ってことかな? だったら、もっと夢を見させてほしい。


 それはね、君の手で……


 お姫様抱っこから始まった夢への入口。そこは二人だけの世界で夜の道。進めば森の中へ……風は、少し肌寒いけれど、君の体温で平気なの。大自然の中へ身を委ねるから。


 そこで僕らは野生の動物……

 或いは、森の妖精のように清らかに……


 大地に転がってキス……お互いの唇の感触から、お互いの体温。高鳴る鼓動までも感じる。ここまでになったのなら、もう僕らは止まらない。ここから先に進んで、もしも先生に見つかったら大問題。きっと怒られちゃうけれど、それでも我慢できそうになくて、


太郎たろう君、僕、どうかしちゃってるの……

 ここからは、ダメなの。修学旅行中なのに、学園行事中なのに……」


 月の光は照らしたの、

 僕の肌……全てに至るまで。見ているものは、太郎君と「お月様だけだよ、千佳ちか。とても綺麗だ。千佳の中の悪い子もどっか行って、まるで天使のよう……」


 ――そして叫ぶ愛!


 きっと、ここは世界の真ん中。遮るものもなく被うものもない開放的な大地。冬の寒さだって結ぶ愛の前には敵わない。愛の本質は激しく、僕と太郎君の息遣いが物語る。


 お月様が見る一部始終……


 それは、お月様だけが知っている内容。そして夢から覚めたなら、二人の世界から皆の世界へ、また再び。ただ梨花りかだけが僕を見て、口にも言葉にもしなかったけど、察したようで、ポンポンと僕の肩を叩くなり「苺パフェ、明日一緒に食べようね」と、言ったの。



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