第六二四回 だから、ハートにリボンなの。


 ――もう、そんな心境!


 キャンプファイヤーのように、燃ゆるような一夜を過ごしたいの。



 いつからだろう? そう思うようになったのは? あの頃とは違う、僕のハート。これがもしかして、思春期特有のドキドキ感? 悪い子にもなれちゃう冒険への憧れも。


 ――今この時、フォークダンスは情熱の炎と化した。


 まるで常夏のように、何時しか到来した冬の寒さも忘れられるかのように。



 ここでもまた演じる、皆が注目するから。そして天空で輝くお月様までも。


「まるで舞踏会、白雪姫と王子様のその後の展開みたい」と、聞こえてくる。「ほら、あの子よ、新解釈の白雪姫の子」「ほんと王妃の子とソックリね、二グループとフォークダンスなんて夢の共演ね」……それから「白雪姫の相手の男子、やっぱイケメンね」とも追加され、僕はきっとドヤ顔だ。最愛のダーリンを褒められたから。僕の自慢の彼だ。


 そしてキャンプファイヤーは……


 まるで名残惜しくも、あの夏の日々を締め括る宴となった。


 次の夏は、また新たなもの。二度とは戻らない中学三年生のこの時、ちょっぴり泣けてきそうになった。そのくせ、脳内ではまた、継続する夏の、あの日に似た暑さ……


 だから、ギュッと身を寄せる。太郎たろう君の胸の中へと――


「まだ、終わりじゃないから」


「そんな顔して、そんなこと言うと、もう止められないぞ」


「うん、鎮めて、僕の疼き……我慢できないの」


 泣きそうなほど恥ずかしいことだけれど、それでも、訴える僕の瞳。とても不安定な僕の心と、その身体も。太郎君は僕の顔を……そんなに見つめないでと思えるほどにも見つめて、フッと息を吐くと、「こりゃ重症だな。二人きりでお月見による治療が必要だな」


 と言うなり、ガバッと、僕を抱えて……お姫様抱っこで、夜道を歩み行くの……



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