第六二三回 なので、女を磨きたくなるの。
――それは、キュンと音を立てる乙女心。トキメキながら振り返ってみると、
「
確かここは、学園のアナザー施設の筈だけれど……つまり、学園の生徒並びに学園の関係者だけが利用可能な場所だけれど、学園の生徒とは違う太郎君が、今ここにいるのだ。
「何だ何だ? その幽霊でも見たような顔は?
それよりも踊ろうぜ、俺となら踊れるだろ? フォークダンス」
「……う、うん」
「よし、それなら早速だ。宜しく頼むぜ、お姫様。まずはお手を拝借して……そうそう」
クスッと、弾む笑い声。太郎君も、あまり得意じゃないようだ。それでも僕に合わせてくれる。僕をエスコートしてくれる。「王子様、もっと見せつけてあげましょ」
という台詞も込みで、キャンプファイヤーをバックに。
皆が注目する中、奏でる音楽の中へと、僕はもっと大胆に、素敵な女になってゆくの。
なので……
「太郎君、このあと予定ある?」
「何だ? 不純異性交遊か?
「ずっといい子でいられません。構ってくれないと悪い子になっちゃうから」
「それ反則だろ? 顔を赤くしながら潤んだ瞳で、上目遣いまでプラスして……明日まで待てないのか? 自由時間で回るんだろ? お土産コーナーやスイーツも満喫しながら」
「それ不純と言わないよ、あくまで純真で健全たる男女のお付き合い。でも、今夜は違うの。……疼いちゃうくらい、どうしようもないの。二人でお月見したい、このまま……」
「どうしようもなく、我儘だなあ……」
「いいもん、我儘で。僕は本気なんだよ、それほど今日を楽しみにしてたんだから」
今日のお月見は……
今宵のお月見は、どうしようもなく熱くなりそうなの。
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