第八十七章 今宵も、お月様が見てるから。

第六二二回 キャンプ的な趣には、やはりキャンプファイヤー。


 ――祭りの後の静けさには、まだまだ早いの。イベントはまだまだ続くよ。



 地味を要求された、これまでの自粛の日々……


 だからこそ、このイベントがとても派手に見えるの。キャンプには付きものの筈の、それを締め括るには、とても相応しい出来事。それがキャンプファイヤー。


 各々が体感している家庭の味が集結した、この場所でのカレーライス。そのライスは飯盒炊飯……特に梨花りかの飯盒炊飯は、おこげがなかった。これには皆も驚きだ。


「どうやってしたの?」というコメント達が押し寄せ、梨花は皆に皆の前に。見事なる質問攻めで、しょうさんはそれを見て「あいつ、もう学園で一大有名になるな」と、呟く。


 カレーライスを食す翔さんは……


「美味しいな、これ」と歓喜も歓喜で、食すこと、お代わりのオンパレード。きっと男子の三倍は大食漢になっている。なので、大食い大会なども密かに催しされていたの。


 男子の間では、翔さんは注目の的となっていた。


 なら、学園へ帰ったなら、翔さんは人気者になりそうだ。うちのクラスの男子生徒たちに。……ちょっぴり嫉妬? 見た目も子供っぽい僕よりも、大人っぽくカッコイイ翔さんの方が、男子は好きだものね。そんなことを思いながらのキャンプファイヤーの刻。


 ただ見るだけではなく、密かに参加型だったの。


 それはダンス……


 盆踊りしか経験のない僕……周りは、皆が躍り出すの。梨花も踊っているの、フォークダンス。しかも翔さんと? いつの間に練習したの? と思える程、息ピッタリで、


 またも嫉妬? 僕と見た目も変わらない瓜二つの梨花に、まるで某歌劇団のような趣の翔さんとの熱烈なフォークダンス。周りを、皆を魅了している。バックのキャンプファイヤーも、まるで背景の一部となるように、この二人を主役の域にまで持ち上げ……


「よお、ボーッとしてどうしたんだ?」


 と背後から、まさかと思いながらも、振り返る僕。聞き覚えのある声だったから。

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