第六一九回 それからジャージに着替えて、キャンプみたいに。


 ――臙脂色。それは僕らのジャージの色。僕ら三十九期生の色……だそうだ。



 多分、三十九期生だったと思う。私立大和やまと中学・高等学園の設立が一九八二年だそうだから、逆算すると……ねっ、そうでしょ? あ、でも、初期は、中高一貫ではなかったそうだ。その前は高等学園で、国際化を図るために中等部を設けて中高一貫としたそうだ。


 それは、瑞希みずき先生のお母さんがまだ……三年。先生になって三年の頃。


 そこまで遡るけれど、それは海外から留学してきた、ある女の子から始まった。その女の子こそがマリさんの、お母さんだった。名前はリンダ……リンダさんと言った。


 ……またいずれ、機会があるのならば、

 その辺りも語っていこうと思う。もう少し情報を得てからになるけど。


 勿論その情報網は可奈かな。歴史を紐解くの、この学園の……ハッとなる。早坂はやさか先生もこの学園の生徒だった。所謂卒業生……って、早坂先生はマリさんのパパだ。ならリンダさんは早坂先生の――「そう、奥様ってことになるね」と、可奈は言ったの。


 いつの間にか、ヌッと、僕の背後にいた。


 ビックリしたのは言うまでもなく、だけれど「あれ? 梨花りかは?」と、聞いた。


 いつもなら可奈の傍に梨花もいるのだけれど、いなかったから……「その様子だと知らないみたいね。飯盒炊爨は梨花が詳しいから、もうすぐ準備しなきゃいけないし。夕飯は各班でカレーを作ることになってるし……」と言いながら、キョロキョロと……


「探してきなよ、可奈。僕らなら待ってるから」


「うん、しょうさんも同じ班だしね。一緒だといいんだけどな」と言いながら駆けてゆく。ここら辺りから忙しなくなってきた夕飯の支度。……それにしても「誰が提案したんだろうね、飯盒炊爨」と、訊いてみる。傍にいる天気てんきちゃんに。天気ちゃんもまた、僕らと同じ班だったの。「それなら、早坂先生と聞いたことがある」と、そう答えたの。


 天気ちゃんは、その名の通り笑顔。僕も笑顔になって、ごく自然にお互い。


「取り敢えず、お野菜から準備しよっか」「うん」と、並んで洗い場に立つ。



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