第六一八回 始まりは制服に身を包んでから、いつものように。


 ――登校する。電車を降りて先に進むにつれ、ブレザー制服の面々が増えてゆく。



 そして、これまでの集大成……


 知った顔が、随分と増えていることに気付く。縁に触れて出会った人々が、僕らの歩んできた日々を飾っている。この学園に編入して、もう二年が経つ。コロナ禍が纏わりつく中に於いても、僕は列記とした自身の物語を描いていた。物語は、物語られる……



 その中での穏やかなる出発。


 きっと、お空が青く広がるように。そして羽搏く鳥のように。


 バスは走る。高速道路に乗って暫くの旅情。向かうは広島の……予定だったのだけれども、これまでの変更に次ぐ変更のため、その予定も原型を留めないまでに、自ずと行く先も変わっていた。目指すは北。北陸の地へと向かっているとの、その情報は可奈かなから仕入れたの。ほぼ一週間前だった。北陸……といえば、僕のパパやお母さんが生まれた地。つまり里帰りの対象となる場所。それは、梨花りかにとってもだった。


 走るバスは二台。中等部三年一組と三年二組、各クラスごと。かつての十二人に分かれたクラス編成はね、今はもう輝ける合体を遂げて二十四人体制。そしてプラスワンだ。


 僕ら三年二組のバスの中に、この旅の道連れ、この度は特別に、高等部一年生が一名だけ、搭乗している。僕と同じで初めての修学旅行となる女の子だ。


 ――葛城かつらぎしょうさん。


 何と早坂はやさか先生の隣に座って、語らいの場を設けている。それは前の方で、そこから距離を置いて僕の隣には……天気ちゃん。参加したのだ、修学旅行に。


 その傍には可奈も……梨花もいる。思えば、いつも集まれる面々だった。教室にいる時と同じ。修学旅行は、この様に其々のドラマを運んでいる。そして創り上げるのだ。


 お泊りは今晩、明日の晩もあるの。初めは施設へ向かう。学園が別荘的な施設を設けていたのだ。高等部の研修で使う場所。今日はまず、その予行練習みたいになるのだ。



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