第六一六回 紅葉冴えわたる秋の世に……或いはそのイメージ。


 ――あくまでイメージだけとなりそうな、変動する気候。


 温暖化の進捗は思いのほか早く、常夏を思わせそうな不陰気だったけれど、繰り返される夏と冬の入口。中々スタートを切れない冬。せめて燃ゆるような恋に期待する。



 相思相愛の名のもとだけれど、朝まで待てない程に焦がれる想い。朝まで待つのであれば、修学旅行の旅先で巡り合い、自由時間にデートのような散策を。


 お土産コーナーも充実。……と、梨花りかが僕に、そうお勧めをした。


「チャンスをものにしなよ」


 と、そう言葉も添えて。その瞬間に脳内に流れ込むイメージたち。まるで年表のように時系列に忠実なまでに再現される。思えばイベント揃いで果てしなく……


 Xマス、大晦日から元旦、節分や御雛祭、バレンタイン&ホワイトデー。その間に行われる高校受験と、その区切りともいえる合格発表。そして一緒に学園へと。楽しいこと尽くしだ。それも太郎たろう君が一緒だから、それから物語が紡がれるから。


 何よりも、生きているから。


 生きているからこそ、縁する皆に会うことができたのだから。……途中が、どんなに絶望的な状況だとしても、諦めなかったら、必ずや縁するものに出会えるのだから。


 かけがえない縁。それは二度とない日々……


 まずは今この時、駆ける先には想い人が待つ。白いセーターに赤いスカートで、それもまた、本年を締め括る紅白を意識したファッション? ううん、あくまで偶然だ。


「よお、早かったな千佳ちか


「太郎君の方がもっと早いよ」と、弾む息とそのハート。ときめく前夜祭となる。


 何が始まるのか? それはね、それはだね……「お揃いのデザインとなるスマートフォン」と、阿吽の呼吸ながらハモるその一言。アイとユーならぬAとUのショップに向かうの。色はもちろん各々のイメージカラーだけれど、お揃いはそのモデルにあるの。高額にならないよう計らう。未成年だから親の許可もいるけれど、普通に機種変更だから……



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