第六一四回 どうせなら今日はハロウィンだし、少人数制なら。


 ――試着した。試着室で試着したまま、その姿のままで。お顔は真っ赤なの。



「おい千佳ちか、これは何かの罰ゲームか?」


 と、いつものような凄みはなく、その姿は寧ろ、とってもお似合いにも思えるの。梨花りか直伝のコーディネートによる今の、しょうさんのその姿。……清楚なヒラヒラのドレスみたいなワンピース。このショッピングモールから帰り道に至るまで、その姿のまま歩くの。


「もう購入もしたし、僕らからの細やかなプレゼント。翔さんがとっても綺麗だから、ウフフ……素敵。お姉様って感じで。なんたって今日はハロウィン。僕もするの」


 ――これから僕のお家で、一緒に仮装パーティだよ。


 と、それはアイコンタクトで、天気てんきちゃんには通じていた。そして一人旅は、いつの間にか賑やかなパーティーに転じるのだ。帰り道は三人に……ある意味、この二人は同じお誕生日。十月二十一日……今はもう、三十一日のハロウィンだけれど、だからこそ帰りの電車は、かぼちゃの馬車のようなイメージ。これからは別名パンプキン祭りと称する。


 お家には、かぼちゃのお菓子がある。


 皆で食す。ここでは皆が仮装するの。翔さんが清楚あるお姉様なら、僕は白雪姫だ。そして天気ちゃんは、お天気予報のアナウンサー風。眼鏡も変えて丸形から四角へ。優等生も更に磨きをかけている。十二名に分かれていたクラスも、学芸会を機に輝ける合体。


 今再びの二十四名に戻った。


 その理由は、学芸会で見せた団結には代えられないから。

 それは天気ちゃんの強き一念によるもの。……だからね、


「ありがと、天気ちゃん。素敵なクラスにしてくれて……」と、言ったらね、何かムスッとして……「それは私の台詞だよ、千佳ちゃん。あなたがお友達になってくれたから、私は頑張れたんだよ」……と。目に涙まで浮かべて、天気ちゃん……


「はいはい、そこまで。せっかくなんだし、楽しまなきゃだろ」


 と、翔さんはニッコリ、天気ちゃんの涙を超える程の、大いなる笑顔を見せてくれた。

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