第六一二回 それからの二人は、ザ・ショッピングモールへと。


 ――並んで歩く。というよりも、緊張のためなのか、まるで行進みたいで。



「ちょっと千佳ちかちゃん、ガチガチすぎ。もっと軽快に……」


「それは天気てんきちゃんもでしょ。もっと自然に歩かなきゃ、僕も軽快に歩けないよ」


「って私のせい? 千佳ちゃんがもっと自然に歩いてくれたら、私だって」


「僕にせいなの? 天気ちゃんがもっと自然に歩いてくれたら、僕だって」


 お互いがお互いの顔を見る。


 面白いくらいに息ピッタリで、同じ台詞を言っている。……で、あるからして、クスッと弾む笑い声に転じた。しかも、もう店内に身を躍らせており、周りからは注目の的。


 周囲を視野に受け入れた時には、もう顔から火が出るのも必死。――そんな最中で、声を掛ける者がいた。その者はきっと、周囲の目をも気にしない程の大らかな精神の持ち主で、多分だけれど、僕と天気ちゃんしか見えてないと思う。その声はハスキーなの。


「おう、梨花りかの片割れ。元気だったか?」


 と、言葉遣いもそうだけど、男の子のような趣だけれど、これでも列記とした女の子。


 思えば僕がボクッ娘だから、ボクッ娘とオレッ娘のコラボが実現……って、もうすでに梨花とコラボしているから、今となっては慣れっこだ。


 葛城かつらぎしょうさん。この度の編入試験を見事にクリアーして、僕と……僕らと同じ学園に通うことになった。……あ、いやいや、もう通っている。高等部一年生。僕らの先輩だ。


「あの、千佳だけど。もう覚えてくれます? 僕の名前……」


 すると、バンバンと背中を叩きながら、もちろん僕の背中だけど……


「何々スキンシップだよ、スキンシップ。今時の子は、冗談の一つ二つ通じなきゃ」


「翔さん、これって傍から見たら、優等生に絡む不良にしか見えないよ。ほらほら、周りの人がね、引いちゃってるよ。悪けりゃ通報されちゃうよ、警察沙汰だよ」


 すると、プッと天気ちゃんが笑う……


「千佳ちゃん、見かけによらず意地悪な子ね」と、感想も述べながら。



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