第六一一回 旅先……とは言っても、しっかりと日帰りコース。
――電車を降りても、まだ午前の風。つまりはそれ程に、近い場所だ。
そして並んで歩く。偶然にも巡り合わせた
「天気ちゃんの行きたい所は?」
「
訊くにも、お互い同じ質問になって平行線。それもその筈で、具体的な場所が思いつかない。もう外出自粛とは違うから、問題はないと思うのだけど、問題が違うか。
すると天気ちゃんが、じっと僕を見るなり、
「お洋服、見に行きたいなあ……」と言うの。
「ショッピングがしたいの? でも、そんなに持ち合わせないし……」
チェックのお財布をチェックする。懐が寒く……あっ、いや、昔はお小遣いなんて皆無だったから、贅沢は言えないから、あるにはあるけれど、ショッピングにはね。
「あっ、いいの。付き合ってくれたら嬉しいな。
見るだけで退屈だろうとは思うけど、私もね、千佳ちゃんと同じようなものだから」
今時の中学生のお小遣いって……
とは思ったけれど、まあ、僕は知らない方がいいかな。
「それにしても……
千佳のセンスはバッチリだね、いつもと違ってお洒落」
それはコートの下。私服では珍しくスカートを履いている。デニムのスカート。行く先は必然と、ユニクロ。……でも今は、ジーユーになっている。思えば、お洋服を見るのって久しく。
で、あるなら、天気ちゃんと一緒なら、お洒落もお勉強できるのかな? このようなのもまた、いいのかも。思えば、小学生の頃に夢見たお友達との、お洋服選び。
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