第六〇四回 少し未来を見つめるお年頃に。


 ――そう、向かう先は未来。まだ見ぬ明日だから、昨日よりも前向きになるの。



 十三歳の頃よりも前へ、十四歳の頃よりももっと前へ、そして十五歳……


 少女から女性へと……喩え子供っぽくっても、大人になるにつれ、色んな人に出会ってきた。気付けばもう、僕はボッチではなくなっていたの。



 思えばティムさんの出会いから……

 それが様々な出会いの始まりだった。ウメチカでの出会いから、今へと至ったのだ。


 梨花りかとの出会いもそうだった。僕と梨花が瓜二つなくらいに似ていたから。そしてその頃は間違っていた行動……違法な売り子をしたから、運命的な出会いとして成立した。


 きっと、出会いのタイミングがあったのだと思う。


 十三歳で出会ったから、僕と梨花は、とても仲の良い双子になれたのだと思う。ズレていたのなら、それは想像もできないこと。あの日あの時、あの場所だったから、


 僕は梨花に酷いことをしたのだけれど、

 梨花は僕のことを許してくれたのだと思う。……梨花は、僕と間違われ補導されたのだから。そして間違われて、怖い目にあったのだから。大泣きするくらいに……



 その出会いから、今も広がり続ける世界観。


 あの頃は諦めにも似た妥協……『世の中こんなもんだよ』と、圧し掛かる黒い雲の意のままで、ボッチの世界観に覆われていた心は、その日暮らしを繰り返すばかり。


 前向きにもなれないまま。そんな僕に教えてくれた。梨花は……同い年だけれど、僕よりもいっぱい持っていたの、前向きになれる要因。その術をも。


 そして編入試験は、僕も受けたことがあるから、アドバイスできることがあるなら、してあげたいの、しょうさんに。今、必勝の白鉢巻をして、お勉強に夢中になっているから。


 それに、梨花の大親友だから。僕にとっても、大切なお友達。



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