第八十四章 そして、六〇〇回を記念する鐘の音に。

第六〇〇回 並んで歩いてみると、本当に。


 ――似てるを越えて、まるで鏡みたいだなお前ら。


 と、そう言ったの。葛城かつらぎ……しょうさんが。横並びの僕と梨花りかを見ながら。



 ならば翔さんの第一印象は、怖かった。……でも、エネルギッシュな人だ。それに梨花と会話をしている場面を目の当たりにすると、とっても面白い人というのがわかる。


 身長は、僕らが見上げる程。髪も艶やかで長く背中まで。上下ともジーンズ姿で、初めは男女の見分けに……少し悩める程だから、もちろんスカートではなくて長ズボン。


 でも、胸は、よく見ると……


 僕らよりも、そこも大人びているような感じだ。



「それにしても梨花、学芸会は二十六日。どうやったら二十一日と間違えるの?」


「アハ……アハハ、ごめんね。そのお詫びと言っては何だけど、学園内を一緒に散策しようという試みに転じて、お誕生日会も開催し、祝ってあげようと思うの、翔さん」


「……まあ、梨花のドジは毎回だから、もう慣れたけど、

 それでも、ありがとな。学校というやつが、どの様なものか、一度見たくてな」


 と、翔さんの表情から……


 何だかその重みを感じた。聞くところによると、翔さんは高校生にあたる。これまでは僕らから想像するに特殊な環境の中、通信教育的なもので補っていたという。一応の学力は身に着けているらしい。それでも、今日で十六歳になったばかり……って、


「翔さん、ついこの間まで僕らと同い年?」


「ああ、こう見えてもだけどな。そう思ってたんだろ? お前らが中三とすれば、俺は高一だな。一応はお前らの先輩であることは違いないな。今時の女子高生って……」


 すると、梨花はフッと息を深くついてから、


「一度とは言わず、これからもずっと一緒だよ、翔さん……」と、言ったの。


「梨花? それってどういう意味?」と僕も翔さんも、思い切り梨花を見る。



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