第五九七回 その名前の通りに、天気の子。


 ――それは、もちろん天気てんきちゃん。


 名は体を表すの代わりと言っては何だけれど、晴れ渡る笑顔によって表現された。



 処によって、にわか雨で……


 早坂はやさか先生と一緒に教室で、その姿を見せた天気ちゃん。その途端だ、急に梨花りかが泣き出したの。……無理もないと思う。梨花が守ってくれたから、天気ちゃんの『新解釈の白雪姫』を。そこにはもう、言葉を超えた思いが、秋を彩る一コマとなって、


「……うん、ありがと。頑張ったんだね、梨花ちゃん」


 と、梨花に寄り添う天気ちゃん。言葉を超えた思いは、言葉となった。


 天気ちゃんの表情を見る限りは、とても爽やかな感じ。……以前よりも、もっともっと最高級にまで。目力も強く……それに伴って、早坂先生も生気漲る趣になっていた。



 これまでの不協和音の、


 その気配は感じられず、まるで新型ウイルスの感染拡大の闇が晴れたように、……

やはり天気の子は、秋の行楽シーズンのような趣を連れてきたの。転んでもタダでは起きない子だから。僕は、そんな天気ちゃんに力強さを感じた。


千佳ちか、学芸会は優勝だよ。私の心はそうだから、千佳もそう心を決めて」


 と、天気ちゃんの勢いづく言葉に、


「うん、やる。やってやるよ、天気ちゃん」


 と、お腹の底から、一片の曇りもなく……釣られてそう言ってしまった。

 あっ……と思うも、天気ちゃんは既にニヤリで、


「言ったからには約束だよ、女に二言はないから」


「でもそれ、男でしょ、男に二言はないって……」


「えへへ、男も女も関係ないない、約束は約束だからね、取り消しは受け付けないよ。とくに千佳はもっともっと。梨花だって頑張ったんだから、ここからは妹の活躍だから」



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