第五九二回 そして予想を裏切る重いお話。
――それは突然、聞こえてきた。
ドアの向こうから。……そのブラウン色のドアの向こうから。
「学芸会を中止にするって、どういうことですか?」
ビックリするくらいの怒鳴り声。
一緒に歩いて、ここを通りかかったから……
「当たり前じゃないですか。この度の事件は、あなたのクラスから出たのですよ。それもクラスの中でいじめがあった……それも、犯罪級のいじめ。
「……はい。確かにそうですが……
しかしだからこそ、彼らを改善するためにも断固として、厳として学芸会は予定通りに行うべきです。それが出雲君の希望だからです。そのために学園側に御迷惑が掛かるのでしたら、どうぞ、僕を如何様にも処分してください。生徒のためなら、それも本望……」
そこからが騒めき、周囲の音が遮った。
あーもう! 肝心なところで聞き取れない! そう思いながらもドアに密着する。密もいいとこで、梨花も可奈も一緒になって張り付くの。ここは校長室の前だから。
ところで僕らは何しに此処を通りかかったのか? ……それは早坂先生に言われて
「職員室へ来なさい」と呼び出されたから。でも、もう、どうでも良くなったから。
すると――
またも突然、今度はドアが動いて、バン! と大きな衝撃が……とっても痛かった。
ドアが迫ってきて、火花が散ったのだ。つまり見事なまでに、顔を開いたドアにぶつけたの。ツーンと鼻が……って、血が……手の平に広がって。梨花と可奈はタイミングよく避けちゃったから、僕だけ鼻血が出ちゃって、涙も一緒に。すると、早坂先生は……
「こら、立ち聞きしちゃ駄目だろ」
と怒鳴って……保健室へ行く前に、僕ら三人は、そのまま早坂先生に怒られた。
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