第五八八回 アンテナを張り巡らせて。
――それは、研ぎ澄まされた感覚。三人が三人とも、其々の役割と場所で。
それもまた、社会人となった時に必要な部分。
そしてまた、今この時にだって。……学園もまた社会の縮図ともいえるだろう。
翌日に、
学園への復活の見通しは、まだ不明。病院へ通院しながら、その経過を見て担当医が判断するそうだ。顔の腫れは治まり、傷も治ってきているのだけど、心は……
なら、僕は明日も会いに行くの。
彼女が拒まない限り。拒んでも、彼女に必要なら、ずっと僕は繰り返すの。
――そうなの。
かつて
今度は僕の番。――天気ちゃんを元気にして見せる。と、その決意に立った丁度その時だ。帰り道の草木が靡くその風の中で、シルエットが見えたの。そのシルエットは、まるで記憶の糸を辿るように、或いは想い出を繰り返すように、近づいてくるの。
僅かばかりの間に、
「よお!」
と、声を掛けてくれた
「久しぶりだな、
「……元気と言えば、嘘になっちゃうね。何とかかな?
ごめんね、ジョギングすっぽかしちゃって。明日からまたね、再開するから……」
実のところは、それが精一杯の言葉だった。そう言わなきゃ、負けちゃいそうで。
「……無理すんなよ。事情は梨花お姉から聞いてるから。猫の手よりマシと思うぞ」
と、太郎君は言ってくれた。黄昏の空も、パッと明るくなったような気がしたの。
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