第五八四回 赤色の回転灯が脳に刻む。
――いつまでも、いつまでも残るの。纏わりつく、その刻まれた記憶。
今日は、帰ることになった。病院を後にすることになった……
と、怒った口調のように聞こえたの。
いつもの早坂先生ではなく、表情も険しく怖くて、何も言えずにそのまま……お家へ。
僕と
スマホには、
……何もなかった。着信も一切。ベッドの上で上半身を起こして見渡すと、いつもと同じお部屋。その広さも、その空気も、見えるのは変わらない日常の風景……
フラフラと……
歩く僕は、お外に出る。歩く、歩いて行く……どこに向かうのか? ジョギングにはもう、心はそこになかった。通り過ぎる人の顔さえも、瞳には映らず虚ろとしていた……
「
と、僕を呼ぶ声が、その虚ろな心の中でこだました。梨花が、もう目の前にいた。振り向いたら……するとまた、どうしようもなく込み上げてきたの。出し切ったはずの涙までも。梨花の胸の中で号泣。梨花はぎゅっと、抱き留めてくれた。
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