第五八二回 君の残した言葉と、約束。
――僕らは教室にいる。それは約束のために。
中休み、各々の席に着いたまま。三人横並び。……でも、
その言葉が出たのは、放課後。
放課後とはいっても、本日の授業の一部始終が終了してからすぐのこと。
駆ける廊下、そして教室へ、四組の教室。同じ新校舎だけれども階違い。階段をも駆け下りる。号令は
阿吽の呼吸で理解し合える三人だ。
約束を破る子ではないと、三人とも信じているの。天気ちゃんのことは、三人とも信じている。もしかして体調が悪くなって早退したとか、何か事情があったのではないかと察する。そんな天気ちゃんが心配で向かっているのだ。階段は下りる方。三階から二階へと……そして辿り着く教室、もちろん四組の。生徒たちはまだ、何名かいる。
声を掛ける、勇気の声。
天気ちゃんの姿が見えないから、どうしているのかと……
早退したそうだ。真っ青な顔をして、教室を出たという。どうしたものかと三人は三人とも顔を見合わせる。彼女のお家を知っているのは、梨花でもなければ、情報通の可奈も知らないそうだ。僕だけが知っている。だけれども、電話番号は知らず、スマホにも登録がないのは言うまでもない。だから行くのだ、彼女のお家に、
電車に乗るのは同じ。私鉄沿線ということも。四駅から最寄りの駅へと帰ってゆく方向までも。最寄りの駅からは、僕のお家の途中にある緑の中へ。
暫く歩いた所、十五分程の所……現れる『出雲』という表札。確かこのお家だった。記憶にはまだ新しく、赤い屋根が特徴の白い壁……早速インターホンを響かせた。
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