第五七四回 よーい、ドン! との合図。


 ――そしてクラス対抗・駅伝レースの幕は今、切って落とされた。


 中等部三年生の第一走者は、パン! と響くピストルの音とともに走り出すのだ。



 第一走者は四人。各クラスが対抗するのだから、アンカーも含めて各四人が続く。そこで気になるのは、第一走者から何人で形成されているのか? 各々のクラスは……


 つまりは、アンカーは何人目なのか?


 千佳ちかの出番は? って皆が思っていることだろうけれど、僕は五番目だから……


 他のクラスもそう。五人が代表で走るの。


 第一走者は可奈かなだ。他のクラスの第一走者も並んで走っている。初めはグランドを回るの、それを繰り返す。……エンドロールと思われたのだけれども、学園のお外に出る許可を得ることができたことで、駅伝らしくなった。なので、グランドは二周。そこからの学園のお外。僅かだけれども、千里の町並みが流れゆく、その風景を楽しむことができる。



 早坂はやさか先生が、校長先生にお願いしたそうだ。

 瑞希みずき先生も加えて、断固お願いしたそうだ。


 それはもう、感謝の思いで溢れている。今走っている可奈の表情も物語っている。見守る僕らも同じ思い。……きっと以前よりも、クラスは団結しているように、僕には見えるの。それが証拠に僕が感極まっているから。それから可奈たち第一走者は、グランドから学園のお外に出る。そして帰ってくるまでは、その模様を僕らは知ることができないけれど、戻ってきてからのグランド入り。見守りつつも熱い応援も併せてカマスの。


「可奈!」と、自分でも驚くほどの、ビッグサイズの声。


「可奈! 行ける、行けるよ!」と、梨花りかも同じ。息ピッタリの声援。


 グランドでは第二走者の、近畿きんき金八きんぱち君が控えているの。可奈に合わせるように走り出すの。――そして襷を繋ぐ! 成功だ。と喜ぶも、他のクラスも同じ。接戦なのだ。四クラスとも大きな差は生まれず、そのまま第二走者へ受け継がれていった。



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