第五六九回 まずはスポーツの秋。とにかく走る。
――或いは駆けるとも。今朝もジョギングに精を出すの。
一人なら『走って』いるのだけれど、二人だから『駆けて』いる。
ちょっとした言葉遊びのつもり。お風呂も二人なら『洗いっこ』というように、二人で走ると『駆けっこ』になるのかな? そうなら素敵だねと、そう思えるのだから、
――負けないの。
色々と規制のかかる新型ウイルスに支配された日々の生活。心まで支配されない。支配されてたまるかとの、そのような思いが二人を強くしている。一緒に並んで走る度。
「
と、言ってくれる
「ありがと、太郎君。そう言ってくれるだけで頑張れる」
と、その言葉通り、とても励みになる。その風景は今の心の色づきと似たような、夜明け間もない朝の訪れ。これがルーティーンとなるなら、素晴らしき安心感といえる。
そしてジョギングから、暫しのブレス。
ウォーキングに切り替わって、児童公園の散策を楽しむ。……まだ充分なの、Tシャツに短パンだけで。寒くもなく心地よい風。火照る身体も温い汗も、良い加減となる。
でも、お話は盛り上がる。
「白雪姫。是非とも観たいな、千佳の白雪姫。……フムフム」と、僕の顔をじっと見るのマジマジと。恥ずかしいと思える程にまで。きっと脳内を駆けるイメージ。太郎君の脳内に描かれる白雪姫になった僕の姿。その姿こそが、当日の僕が扮する白雪姫となる。
食する赤い林檎は、毒入り……
僕は眠るの。なら、目覚めは? そのイメージが過った時だ。
「千佳、白雪姫はキスで目覚めたよな? 相手は? 王子様は誰?」と、太郎君はマジマジと訊くの。ある意味お約束な展開だけど、……ヒントは歌劇団のような感じなの。
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