第五六八回 暗黙の了解も込みで、秋の行事は今。


 ――そう。その日から。


 早坂はやさか先生が宣言したその日から、動く前触れの、蠢くという表現がベストマッチ。



 クラスのメイトたちが、騒めくことから始まる。空気が変わったというのか、新たなる風が……本当に、一年半ぶりに吹いたというその様な心境。その集まりともいえる。


『修学旅行は延期にこそなったが、

 必ずあるから。いや、断固やると皆、先生に呼吸を合わせてくれ』


 と、今までに見たこともない厳とした早坂先生のその言葉が、その原因となった。



 そのために行われる体育祭。その代わりとなる『クラス対抗・駅伝レース』


 学年ごとに行われる。中等部三年生は全員で四十八名。一クラス十二名の四クラス。密を避けるため、今年からそうなった。二年生の時は一クラス二十四名だった。


 実地する日程は九月二十一日から。二十一、二十二、二十四の三日間で行われるの。ちなみに中等部三年生は二十一日。午前の風の中。チームワークの強化を狙う。


 それが狙いだと、早坂先生は言う。


 続けて第二弾となる文化祭。その代わりとなる『クラス対抗・学芸会』


 体育館で行われる予定だ。その様子はモニターに映し出されて、各学年各学級の教室で鑑賞することができる。全国ネットならぬ、学園の全学年全学級ネットなの。


 それも、授業時間で行われるわけだから、必ず観られるわけだ。それはそれで僕も観るわけだけれど、参加するも見学。映画鑑賞を待つような心境だったけれども、


 ……えっ? ええっ? と、みるみるうちに、或いはあれよあれよと、皆が皆、僕を押すの。これって梨花りかの陰謀? ううん、どちらかといえば可奈かなの方が怪しい。


 駅伝レースは僕がアンカー。それでそれで学芸会では、僕が白雪姫? ちょっとちょっと、何で目立つ役割になっちゃうわけ? もろ主役じゃない。そして早坂先生は一言。


「それは皆が、千佳ちか君を頼りにしてるからだよ」……と、意図も簡単に。



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