第五六七回 秋の行事は一旦白紙。そこからまた。


 ――新たな流れともなるのか? 三か月間の主な行事が挙げられるのだ。



 会社を例にするなら、全部署を総合で参加した全体会議とでもいうのか? ……その様なもの。それの学園版と思って頂ければいいと思う。但し密を避けるため、各学年、学級が別れて、そこの担任の先生が説明するというもの。質問もありきな授業時間の中、



 早坂はやさか先生が黒板に、その内容を……


 黒板狭しとビッグな文字で書き出すの。それを書き写すノート。エブリキャラの絵柄が飾られるシャーペンを用いて書いている。筆箱も同様にエブリキャラ。それが僕の長きに渡るマイブーム。小学生の頃から……ううん、この学園に来てから色付いているの。


 今はもう、僕のお小遣いで買ったもの。


 梨花りかたちと会う前は、少し……万引きもしていたの。ボッチだった頃、皆が持っている筆記用具が可愛らしくて羨ましかったから。中には、その頃の美千留みちると一緒に万引きしたこともあったけれど……悪いことは栄えないの。覚えたての盗みの味は、いつしか僕を誘うようになっていて……でも、竹箆返しは必ず来るの。お店の人に捕まっちゃって、


 容赦なく……それでお母さんに叩かれて、殺されるかと思ったほどだ。


 それ以来、しなくなった。


 貧乏であっても、万引きはしないと心に硬く決めたのだ。それもあってか、いじめも加速した。よくある連鎖反応だ。でも、屈しなかったの。それだけは、何があっても。



 ……考えてごらん。


 僕が万引きしたがために、そのお店はどうなると思う? 面識のない僕のために、誰かがそのリカバリーをしてるの。僕の代わりに立て替えているの。迷惑かけてるのだよ。


 もしその人も、僕とお母さんのように貧乏だったら……それこそしてはいけないの。その苦しみは、わかりすぎるくらいに、わかってあげられることだから。



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