第五六五回 帰り道は、女同士のお話へと。
――そう。帰り道。太郎君のお母さんが車で、送ってくれることになったの。
その行く先は、もちろん五番町。僕のお家。思えば、少しばかり距離はある。
運転席と助手席の距離。殆どお傍。
「
「あっ、いいえ、僕は何も……」
「実は今朝ね、太郎と喧嘩しちゃってね、……あっ、千佳ちゃんに言ってもな……」
意外だったの。僕と違って……お母さん想いの太郎君が、お母さんと喧嘩? なら、察することは一つ。そして脳を素通りして、
「あの、高校生になったらアルバイトしたいって、……言ってたの、太郎君」
と、訊いてしまったの、余計なことをと、後になって悔やむけれど、
「ったく青二才が、ちょっと女を知ったからって生意気に。……って、あっ、大きな独り言、ごめんね、ビックリしちゃったね、千佳ちゃん」
明らかなる動揺。心なしか、ホロリと涙を見せそうな太郎君のお母さん。……「そんなこと気にしなくていいのにね。太郎も、いつしか大人か……」
僕から見てもわかるの。
羨ましい程の親子の愛……僕は、お母さんが辛かった時、自分のことばかりだった。自分だけが辛いと思っていたの。本当に子供だった。太郎君はずっと大人だ。
「あの、何と言ったら……」
「これからも太郎のこと、よろしくね、千佳ちゃん。……それからね、エッチする時は正しくね。スキンシップも大切と思うから、私も応援するから……って、これ、太郎には内緒。女同士の秘密だ。でも、千佳ちゃんとなら、いつ家族になっても大歓迎だから」
言うまでもなく、しっかりバレちゃっていた。
家族になるのは、もう少し先の話と思うから。できるなら結婚を先にしたいから。
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