第五六四回 前回のお話に存在する秘め事。


 ――それは、エッセイにも綴ることのできない秘め事……そのつもりだった。


 でも、僕のエッセイでは秘め事さえも、正直に書いてしまうの。……というわけで、この度の出来事も暴露しちゃうの。太郎たろう君との、二人だけの秘め事だったけれども……


 いいよね?


 夏休み最終日の今日は、普通なら八月の三十一日だけれど、それまで待てない新学期の訪れによって、太郎君との時間も限られてしまうから、太郎君成分を吸収したく……


 僕は太郎君の手を引っ張って、

 急遽、太郎君のお家にレッツゴーすることにした。


 夏の暑さを理由にするなら、駆け抜けてきたことによる汗も、そのうちの、ちょっとばかりの女の疼き……の補助的要素。つまりは太郎君への挑発のつもり。子供っぽさから少し背伸びした色仕掛けを仕組んだ。……やっぱり、思い出しても恥ずかしく。でも、それ以上に、太郎君は壁ドンの畳バージョンとでもいうのか、僕を押し倒したような感じ。


千佳ちか、コンビニからそうだっただろ、俺の腕にくっついた時から」


「……久しぶりだったから」


「いつから、そんなエッチになったんだ? わざとなら文句は言えないよな?」


 重なる唇と唇……だけではなく、少しばかりの大人への冒険も含む。お互いの成分を吸収するため、身体も重なる密着の域まで。吐息まみれの火照る身体は、二人の高鳴る鼓動を奏でるの。「太郎君、もっと……」と言いかけた丁度その時、玄関のドアの鍵が、


 ――響いたの。


 大慌てで整えるお洋服の乱れまでも。脱げているのも含めてササッと、息ピッタリにまで。そして間髪入れずに御対面ということだったの、それは午後三時の出来事で、太郎君のお母さんと……「あっ、千佳ちゃん、来てたのね。じゃあ、太郎と交代。おばちゃんが相手だよ、モリオカート」と、颯爽と僕の横でゲーム開始となったのだ。


「ところで千佳ちゃん、すごい汗だけど、暑い?」


「アハハ……」と、ちょっとドキッとしたの。太郎君も呼吸ピッタリに。



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