第五六三回 八月のララバイは、母と子と。
――駆け抜けた先は、やはり
そして、お邪魔してからも、僕らは駆け抜けるの。今度はモニターの画面……というよりテレビ画面。意外とレアなゲーム機を使っている。ファミリー用のゲーム機。
僕は太郎君の横で、太郎君と同じようにコントローラーを弄る。
並んでいるのはリアルだけではなく、ゲームキャラも横並びで走っているの。
キャラ名はモリオ。そしてルイージオアナだ。
乗り物はカートで、……ネタバレするならば、モリオカートだ。しかも旧式。それはそれは僕もビックリで、思わず声も出ちゃったの。喜々とする声にも似たり……
「僕ね、旧式のモリオカートしてみたかったの」
「こんなに喜んでくれるとは光栄。俺の誕生日に、おかんがプレゼントしてくれたものなんだ。中古だけど、性能はバッチリだ。たまにはリサイクルショップもいいもんだぞ」
「今度一緒に行こっ、何処にあるお店なの?」
「う~む、車だったから、おかんと一緒に。何でも国道沿いだった。京の都方面……」
その約束は、もう少し先になりそう。僕らはまだ、お車が運転できない。免許を取得するにも、その年齢にさえ達していない。いきなり現実を見るような感覚に包まれ、
「来年こそは、
「颯爽と叶うよ、そのご希望。高等部になったら、研修旅行というものがあるの。その次は臨海学校もね。イベント満載な設定なんだから、まずは高校受験を大勝利だよ」
僕は太郎君の背中を押す……というよりも、太郎君にとってはもう志望校なの。僕が進学する学園。そのために夏休み、お休み返上のお出掛けも自粛も自粛で頑張った。頑張ったんだから、二人でお勉強をも。するとそこに、帰ってきたの。
「おかん、今日は早かったね」……と。
それは、まだ夕方にもならない午後三時のこと。窓から零れる光も、まだ明るかった。
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